IoT研究のリーディングカンパニー

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP/UNL、所長:坂村健INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長)は、IoT(Internet of Things)とユビキタス・コンピューティングに関する研究分野のパイオニアである。IoT分野での基礎研究に加えて、それを活かした応用研究、コンサルテーションを行うとともに、コミュニティを形成・運営している。

図1 IoTに関連する研究テーマ

Aggregate Computing

YRP UNL では、IoT の全体アーキテクチャを統括する、Aggregate Computing の基礎研究を行い、その成果の標準化、および国内外への展開・普及活動に寄与している。

Aggregate Computing とは、複数のメーカーが提供するIoTノードのためのクラウド環境を連携させるしくみである。Aggregate Computing の実現のために、API(Application Programming Interface)をオープンにすることによりクラウド環境を連携させるとともに、それらに対するガバナンス管理機能を提供するための統合フレームワークを研究しており、これを「u2(uID アークテクチャ 2.0)」とよんでいる。u2 では、IoT 環境を構築するすべての機器に、ucode(ubiquitous Code)を付与する。このucode は、ITU-T Recommendation Y.4805 により標準化されたID 体系である。

国際的な協力活動も進めている。以前に行っていたEUとのアーキテクチャ連携活動に続いて、現在、マレーシアをはじめとした東南アジア地域へのu2アーキテクチャの展開のため、チュートリアルを進めている。

図2 IoT-Aggregatorの仕組み

リアルタイムエッジノード

YRP UNL では、IoT におけるエッジノードにおいて、リアルタイムコンピューティング環境を構築するための基礎研究を行い、その成果の標準化に寄与している。

エッジノードにおけるリアルタイムコンピューティングを実現するためのOS として、μT-Kernel 3.0 の仕様策定およびソースコードのリリース活動に携わっている。μT-Kernel 3.0 は、キロバイト単位のメモリしか持たないRFID チップや微小なセンサーなどの極小規模のシステムから、中規模で高性能なシステムまで、幅広い規模やハードウェア性能に対応可能なスケーラビリティを備えている。また、高度な省電力機能により、電源供給の厳しい環境に置かれたIoT エッジノードにおいて、電力消費を最小限に抑えたシステムを構築できる。また、μT-Kernel 3.0 は、IEEE(米国電気電子学会)の定めるIoTエッジノード向け世界標準OS の仕様「IEEE 2050-2018」に対して、完全上位互換になっている。そのため、μT-Kernel3.0の仕様に準拠したOS であれば、そのままIEEE 2050-2018 の仕様にも準拠したグローバルスタンダードのOSとなる。

2020年7月にμT-Kernel3.0をGitHubより公開 し、定期的にメンテナンスを行っている。

図3 μT-Kernelを使った小規模なHTTPサーバの構成例
図4 GitHub上に公開されたμT-Kernel 3.0

パーソナルデータ保護機構

IoT においては、機器を操作する人や環境内にいる人の属性に基づいた、環境の制御がなされる。このため、個人がもつ情報(パーソナルデータ)の適切な扱いが不可欠である。

このパーソナルデータの保護に関する重要性が世界的に高まっている。EUではGDPR、中国では中华人民共和国网络安全法、日本の改正個人情報保護法など、世界各国でパーソナルデータの域外移転の制限や本人の同意を得ない第三者提供の禁止等を含むような法律が整備されている。これは、パーソナルデータを誰にどこまで提供するかをコントロールするための権利を個人の手元に取り戻す流れである。

このような考え方に基づき、個人が主体となって自身のデータを管理し、どのサービスにどの情報を提供するかをきめ細かく決定できるためのしくみが、PDS(Personal Data Store)である。

YRP UNL では、預けたどのパーソナルデータをどの事業者へ提供するか、すべて個人が判断できるPDSのしくみを研究している。また、このPDSを用いてパーソナルデータを個人が管理するユースケースの検証と普及を行っている、一般社団法人IoTサービス連携協議会(AIoTS)の事務局として、これらの取組を積極的に推進している。

図5 PDSのイメージ
図6 パーソナルデータの提供イメージ

研究成果に基づくパッケージの構築

IoT分野での基礎研究・応用研究の成果のうち、運用実績を得て展開可能な事例については、パッケージ化して展開する活動も進めている。

コミュニティの形成・運営

IoT技術を推進するためには、開発した技術をもとに技術者・エンドユーザ等多数のステークホルダを結びつけて利用できる環境を整備するとともに、制度面の整備が必要である。

我々は、以下に代表される目的に応じた多数のコミュニティを形成し、開発技術の普及・展開を促進するとともに、制度を整備するための政策提言を発している。